@IDX:57200
@OFF:0xe1
@SPK:
@JPN:　………………。
@ENG:

@IDX:57201
@OFF:0x113
@SPK:
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:57202
@OFF:0x141
@SPK:
@JPN:　……。
@ENG:

@IDX:57203
@OFF:0x1c5
@SPK:
@JPN:　部屋の窓から差し込む朝日が、ゆっくり動いて顔を　直撃する。
@ENG:

@IDX:57204
@OFF:0x20f
@SPK:
@JPN:　瞼にかかる光が、強制的に意識を目覚めに導く。
@ENG:

@IDX:57205
@OFF:0x24b
@SPK:
@JPN:　その流れに従って、目を覚ました。
@ENG:

@IDX:57206
@OFF:0x28b
@SPK:
@JPN:　体調は、それほど悪いわけではない。
@ENG:

@IDX:57207
@OFF:0x2bd
@SPK:
@JPN:　なんとなく疲れが残っている感じはするが、身体の　キレ自体は悪くない。
@ENG:

@IDX:57208
@OFF:0x311
@SPK:
@JPN:　もそもそと布団から這い出すと、部屋の時計に視線　を移した。
@ENG:

@IDX:57209
@OFF:0x36b
@SPK:
@JPN:　……７時半を少々過ぎている。
@ENG:

@IDX:57210
@OFF:0x397
@SPK:
@JPN:　普段より１０分ほど遅いが、この程度の遅れは楽に　取り戻せる。
@ENG:

@IDX:57211
@OFF:0x3e3
@SPK:
@JPN:　問題ない。いつも通りだ。
@ENG:

@IDX:57212
@OFF:0x4c4
@SPK:
@JPN:　出かける準備が整ったのは、予定通りいつもと変わ　らない時間。
@ENG:

@IDX:57213
@OFF:0x510
@SPK:
@JPN:　今から出れば、のんびりと着替えられる。
@ENG:

@IDX:57214
@OFF:0x546
@SPK:
@JPN:　時間のゆとりは心のゆとり。
@ENG:

@IDX:57215
@OFF:0x570
@SPK:
@JPN:　今日は余裕を持って仕事に臨めそうだ。
@ENG:

@IDX:57218
@OFF:0x69f
@SPK:[\protag]
@JPN:　御堂さんですか？　どうぞ。
@ENG:

@IDX:57220
@OFF:0x79a
@SPK:［真魚］
@JPN:　ゴメンね、先輩じゃなくて……。
@ENG:

@IDX:57223
@OFF:0x7f0
@SPK:[\protag]
@JPN:　……あれ？　何で真魚がここに……？
@ENG:

@IDX:57225
@OFF:0x857
@SPK:［真魚］
@JPN:　今日、仕事が夜になっちゃったから、その連絡に来たの……。
@ENG:

@IDX:57228
@OFF:0x8c7
@SPK:[\protag]
@JPN:　ああ、ありがとう……じゃなくて、何で真魚がそんなことを言いに来るんだ？　御堂さんは？
@ENG:

@IDX:57230
@OFF:0x960
@SPK:［真魚］
@JPN:　分かんない。お休みしたみたいなんだ。
@ENG:

@IDX:57233
@OFF:0x9bc
@SPK:[\protag]
@JPN:　『したみたい』って、連絡とかなかったのか？
@ENG:

@IDX:57235
@OFF:0xa2b
@SPK:［真魚］
@JPN:　うん……。無断欠勤なんてしたことなかったんだけどな……。
@ENG:

@IDX:57238
@OFF:0xa9b
@SPK:[\protag]
@JPN:　ひょっとして、なんかあったのかな？
@ENG:

@IDX:57240
@OFF:0xb02
@SPK:［真魚］
@JPN:　分かんないよ。婦長さんも不思議がってたし、どうしちゃったのかなぁ……。
@ENG:

@IDX:57243
@OFF:0xb80
@SPK:[\protag]
@JPN:　そんなに心配することないと思うけどな。御堂さんだって完璧じゃないんだし、寝坊の一つくらいするかもしれないだろ？
@ENG:

@IDX:57245
@OFF:0xc33
@SPK:［真魚］
@JPN:　そうなのかなぁ……。先輩に限ってそんなことはないと思うんだけどなぁ……。
@ENG:

@IDX:57248
@OFF:0xcb3
@SPK:[\protag]
@JPN:　まあ、今ここであれこれ言っても仕方ないだろ。あとで電話でもしてみたらどうだ？
@ENG:

@IDX:57250
@OFF:0xd44
@SPK:［真魚］
@JPN:　うん……。
@ENG:

@IDX:57253
@OFF:0xd86
@SPK:[\protag]
@JPN:　で、仕事が夜って何時頃になるんだ？
@ENG:

@IDX:57255
@OFF:0xe63
@SPK:［真魚］
@JPN:　え、仕事？　んーとね……確か、６時くらいに準備が終わるって言ってたから……遅くても８時ごろじゃないかな？
@ENG:

@IDX:57258
@OFF:0xf03
@SPK:[\protag]
@JPN:　そうか……で、連絡は真魚がくれるのか？
@ENG:

@IDX:57260
@OFF:0xfe8
@SPK:［真魚］
@JPN:　分かんないけど、このまま先輩がお休みなら私がすると思う。
@ENG:

@IDX:57263
@OFF:0x1058
@SPK:[\protag]
@JPN:　そっか、もしお前が連絡することになっても、この間みたいに忘れたりするなよ？
@ENG:

@IDX:57265
@OFF:0x115d
@SPK:［真魚］
@JPN:　へーき！　今度は忘れない。ちゃんと連絡するよ！
@ENG:

@IDX:57268
@OFF:0x11c3
@SPK:[\protag]
@JPN:　頼んだからな？
@ENG:

@IDX:57270
@OFF:0x128c
@SPK:［真魚］
@JPN:　うん！　頼まれた。
@ENG:

@IDX:57273
@OFF:0x1312
@SPK:[\protag]
@JPN:　ふぅ……また着替えなくちゃいけないのか……。
@ENG:

@IDX:57275
@OFF:0x1417
@SPK:［真魚］
@JPN:　……あ、そうそう……。
@ENG:

@IDX:57278
@OFF:0x1465
@SPK:[\protag]
@JPN:　うどわっ！？
@ENG:

@IDX:57280
@OFF:0x152c
@SPK:［真魚］
@JPN:　……どうかした？
@ENG:

@IDX:57283
@OFF:0x1574
@SPK:[\protag]
@JPN:　こ、更衣室に入る時は、ノックくらいしろよ！　今、脱ごうとしてたんだぞ！？
@ENG:

@IDX:57285
@OFF:0x1677
@SPK:［真魚］
@JPN:　ゴメンゴメン。伝え忘れてたことがあったからさ。
@ENG:

@IDX:57288
@OFF:0x16dd
@SPK:[\protag]
@JPN:　……まだ何かあるのか？
@ENG:

@IDX:57290
@OFF:0x17ae
@SPK:［真魚］
@JPN:　うん。副院長先生が呼んでたよ。何か、大事な話があるって。
@ENG:

@IDX:57293
@OFF:0x181e
@SPK:[\protag]
@JPN:　大事な話？　……何だろうな。
@ENG:

@IDX:57295
@OFF:0x187f
@SPK:［真魚］
@JPN:　さあ……私も知らない。ちゃんと行ってね？
@ENG:

@IDX:57298
@OFF:0x18df
@SPK:[\protag]
@JPN:　分かってるよ。副院長の呼び出しを無視するほど度胸はないからな。
@ENG:

@IDX:57300
@OFF:0x19d8
@SPK:［真魚］
@JPN:　よろしい！　じゃあ、またね！
@ENG:

@IDX:57301
@OFF:0x1a68
@SPK:
@JPN:　今度こそ、本当に行ったらしい。
@ENG:

@IDX:57302
@OFF:0x1a96
@SPK:
@JPN:　ドア越しに、バタバタと足音が響いてくる。
@ENG:

@IDX:57303
@OFF:0x1ace
@SPK:
@JPN:　それが徐々に遠ざかり、全く聞こえなくなってから　着替えを開始する。
@ENG:

@IDX:57304
@OFF:0x1b32
@SPK:
@JPN:　しかし、あの御堂さんが無断欠勤をするとは確かに　意外だ。
@ENG:

@IDX:57305
@OFF:0x1b7a
@SPK:
@JPN:　まさか、夏風邪でも引いて寝込んでるなんてことは　ないだろうな……。
@ENG:

@IDX:57306
@OFF:0x1bcc
@SPK:
@JPN:　まあ、真魚が電話をするだろうから、どうしたのか　あとで聞いてみよう。
@ENG:

@IDX:57307
@OFF:0x1c34
@SPK:
@JPN:　それより今は副院長の呼び出しの方が気になる。
@ENG:

@IDX:57308
@OFF:0x1c70
@SPK:
@JPN:　呼び出されるようなことに、心当たりはない。
@ENG:

@IDX:57309
@OFF:0x1caa
@SPK:
@JPN:　……とにかく、行ってみるしかない。
@ENG:

@IDX:57310
@OFF:0x1cdc
@SPK:
@JPN:　湧き上がる不安をため息一つで追い出すと、急いで　着替えを済ませてバッグを肩に担ぐ。
@ENG:

@IDX:57311
@OFF:0x1d3e
@SPK:
@JPN:　ノブに手をかける直前もう一度だけため息をつき、　更衣室をあとにした……。
@ENG:

@IDX:57314
@OFF:0x1e8d
@SPK:[\protag]
@JPN:　僕です……よろしいでしょうか？
@ENG:

@IDX:57316
@OFF:0x1ef0
@SPK:［千草］
@JPN:　ええ、どうぞ。
@ENG:

@IDX:57318
@OFF:0x2006
@SPK:［千草］
@JPN:　すまないわね、わざわざ来てもらって。
@ENG:

@IDX:57321
@OFF:0x2062
@SPK:[\protag]
@JPN:　いいえ。副院長に呼ばれたら、来るのが当然です。
@ENG:

@IDX:57323
@OFF:0x20d5
@SPK:［千草］
@JPN:　フフフ、随分と口が上手になったわね？　まあいいわ、こっちに来て。
@ENG:

@IDX:57324
@OFF:0x21d8
@SPK:
@JPN:　招かれるまま、副院長の横に立った。
@ENG:

@IDX:57325
@OFF:0x220a
@SPK:
@JPN:　ここからだと、すらりと形良く伸びた副院長の脚が　よく見える。
@ENG:

@IDX:57326
@OFF:0x2256
@SPK:
@JPN:　香水をつける代わりに香を焚いているのか、僅かに　爽やかな香りが漂っている。
@ENG:

@IDX:57329
@OFF:0x22ec
@SPK:[\protag]
@JPN:　いい香りですね……沈香ですか？
@ENG:

@IDX:57331
@OFF:0x234f
@SPK:［千草］
@JPN:　よく分かったわね？　その通りよ。でも最近の若い人で沈香の香りが分かるって、珍しいんじゃない？
@ENG:

@IDX:57334
@OFF:0x23e3
@SPK:[\protag]
@JPN:　いいじゃないですか……どうせ僕は若さがありませんよ……。
@ENG:

@IDX:57336
@OFF:0x251c
@SPK:［千草］
@JPN:　バカね……すねることないでしょ？　博識を誉めたのよ。
@ENG:

@IDX:57339
@OFF:0x2588
@SPK:[\protag]
@JPN:　まあ、いいんですけど……それより、なんでしょうか？
@ENG:

@IDX:57341
@OFF:0x2692
@SPK:［千草］
@JPN:　ん？　ああ、呼び出しのこと？　そうね……もしかしたらもう知ってることかもしれないけど……。
@ENG:

@IDX:57344
@OFF:0x2724
@SPK:[\protag]
@JPN:　僕の知ってることですか？
@ENG:

@IDX:57346
@OFF:0x2781
@SPK:［千草］
@JPN:　もしかしたらよ。
@ENG:

@IDX:57349
@OFF:0x27c9
@SPK:[\protag]
@JPN:　はあ……。
@ENG:

@IDX:57351
@OFF:0x2818
@SPK:［千草］
@JPN:　御堂さん、病院辞めちゃったんだけど、知ってた？
@ENG:

@IDX:57355
@OFF:0x2896
@SPK:[\protag]
@JPN:…
@ENG:

@IDX:57356
@OFF:0x28a4
@SPK:
@JPN:…
@ENG:

@IDX:57357
@OFF:0x28b2
@SPK:
@JPN:…
@ENG:

@IDX:57358
@OFF:0x28c0
@SPK:
@JPN:…
@ENG:

@IDX:57359
@OFF:0x28d4
@SPK:
@JPN:え！？
@ENG:

@IDX:57361
@OFF:0x29d9
@SPK:［千草］
@JPN:　その驚き方だと、知らなかったみたいね。
@ENG:

@IDX:57364
@OFF:0x2a37
@SPK:[\protag]
@JPN:　辞めたって……それはつまり……あの……退職したってことですか？　そんな……何で……。
@ENG:

@IDX:57366
@OFF:0x2ad0
@SPK:［千草］
@JPN:　私にもよく分からないのよ。昨夜私のところに来たんだけど、一身上の都合と繰り返すだけで……。
@ENG:

@IDX:57368
@OFF:0x2b6f
@SPK:［千草］
@JPN:　私も正直なところ困ってるのよ……御堂さんは信頼してたし、この看護婦不足の折に正看護婦の補充なんて……責任者としても頭が痛いわ。
@ENG:

@IDX:57371
@OFF:0x2c25
@SPK:[\protag]
@JPN:　そ、それで御堂さんは今どこに……？
@ENG:

@IDX:57373
@OFF:0x2c8c
@SPK:［千草］
@JPN:　今朝早く部屋を引き払うって言ってたわ。退職後の身の振り方とか、詳しいことは何一つ教えてくれなかったの。
@ENG:

@IDX:57375
@OFF:0x2d37
@SPK:［千草］
@JPN:　仕方ないから、担当は佐伯さんに引き継いでもらうわ。それで構わないかしら？
@ENG:

@IDX:57378
@OFF:0x2db7
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:57380
@OFF:0x2e06
@SPK:［千草］
@JPN:　聞いてる？
@ENG:

@IDX:57383
@OFF:0x2e48
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？　あ、す、すみません……。担当の方はそれで構いません……。
@ENG:

@IDX:57385
@OFF:0x2f5e
@SPK:［千草］
@JPN:　そう？　それじゃ、佐伯さんの方には私から言っておくわ。
@ENG:

@IDX:57388
@OFF:0x2fcc
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:57390
@OFF:0x30d7
@SPK:［千草］
@JPN:　……あまり御堂さんのことは気にしないで。看護婦と言っても会社員と変わらないんだから、たまにこんなこともあるのよ。
@ENG:

@IDX:57393
@OFF:0x317f
@SPK:[\protag]
@JPN:　……え、ええ。そうですね、あまり気にしないようにします。
@ENG:

@IDX:57396
@OFF:0x31ef
@SPK:[\protag]
@JPN:　それじゃあ、僕はそろそろ……。
@ENG:

@IDX:57398
@OFF:0x32e5
@SPK:［千草］
@JPN:　ええ。じゃあまた。
@ENG:

@IDX:57399
@OFF:0x33de
@SPK:
@JPN:　余程御堂さんのことで頭が一杯だったのだろう。
@ENG:

@IDX:57400
@OFF:0x341a
@SPK:
@JPN:　気づくとロビーで立ち尽くしている自分がいた。
@ENG:

@IDX:57401
@OFF:0x3468
@SPK:
@JPN:　青天の霹靂。
@ENG:

@IDX:57402
@OFF:0x3484
@SPK:
@JPN:　つい昨日まで御堂さんと働いていたのが嘘のように　思える。
@ENG:

@IDX:57403
@OFF:0x34de
@SPK:
@JPN:　一身上の都合……。
@ENG:

@IDX:57404
@OFF:0x3500
@SPK:
@JPN:　それだけで切り捨てられるほど、この病院での仕事　は彼女にとって軽いものだったのだろうか。
@ENG:

@IDX:57405
@OFF:0x3574
@SPK:
@JPN:　僕に何も告げないで辞めるのは、まだ分かる。
@ENG:

@IDX:57406
@OFF:0x35ae
@SPK:
@JPN:　最初の頃に比べたら、普通に接してくれるようには　なっていたが、仲がいいと言えるほど、僕は彼女と　親しくはない。
@ENG:

@IDX:57407
@OFF:0x362c
@SPK:
@JPN:　だが、副院長や真魚にまで何も打ち明けずに辞めた　というのは、正直不自然な気がする。
@ENG:

@IDX:57408
@OFF:0x368e
@SPK:
@JPN:　少なくとも、普段あれだけ自分を慕っている真魚に　くらいは相談しても良さそうなものだが……。
@ENG:

@IDX:57409
@OFF:0x371f
@SPK:
@JPN:　『そんなにつらいなら、辞めてしまえばいいのに』　
@ENG:

@IDX:57410
@OFF:0x3771
@SPK:
@JPN:　昨日、彼女がそう言っていたのを思い出した。
@ENG:

@IDX:57411
@OFF:0x37ab
@SPK:
@JPN:　……あれは彼女自身に向けられた言葉……だったの　だろうか？
@ENG:

@IDX:57412
@OFF:0x386a
@SPK:
@JPN:　僕が死体洗いを始めてから１週間。
@ENG:

@IDX:57413
@OFF:0x389a
@SPK:
@JPN:　それなりに仕事には慣れてきたが、今日はこれまで　で一番衝撃的な出来事があった。
@ENG:

@IDX:57414
@OFF:0x38f8
@SPK:
@JPN:　御堂さんの退職……。
@ENG:

@IDX:57415
@OFF:0x392c
@SPK:
@JPN:　疑問……混乱……懊悩。
@ENG:

@IDX:57416
@OFF:0x3952
@SPK:
@JPN:　頭の中をグルグルと色々な思いが渦巻いている。
@ENG:

@IDX:57417
@OFF:0x398e
@SPK:
@JPN:　このまま帰っても鬱になるだけだ。
@ENG:

@IDX:57418
@OFF:0x39be
@SPK:
@JPN:　少し頭を冷やしていこう。
@ENG:

@IDX:57419
@OFF:0x3a56
@SPK:
@JPN:　中庭には、いつものような活気があった。
@ENG:

@IDX:57420
@OFF:0x3a8c
@SPK:
@JPN:　病と闘う強い心。
@ENG:

@IDX:57421
@OFF:0x3aac
@SPK:
@JPN:　自らの傷を癒そうという強い決意。
@ENG:

@IDX:57422
@OFF:0x3adc
@SPK:
@JPN:　迷いの海を彷徨う僕の心とは、あまりにも対照的な　光景が広がっていた。
@ENG:

@IDX:57423
@OFF:0x3b42
@SPK:
@JPN:　ベンチに重い足取りで近づく。
@ENG:

@IDX:57424
@OFF:0x3b6e
@SPK:
@JPN:　ゆっくりと腰を下ろす。
@ENG:

@IDX:57425
@OFF:0x3b94
@SPK:
@JPN:　大きくため息をつく。
@ENG:

@IDX:57426
@OFF:0x3bc6
@SPK:
@JPN:　タールの沼に足を踏み入れてしまったかのように、　僕の心と身体の動きは鈍くなっていた。
@ENG:

@IDX:57427
@OFF:0x3c2a
@SPK:
@JPN:　御堂さんが担当を辞めた。
@ENG:

@IDX:57428
@OFF:0x3c52
@SPK:
@JPN:　御堂さんが病院を辞めた。
@ENG:

@IDX:57429
@OFF:0x3c7a
@SPK:
@JPN:　そのあまりにも唐突な出来事が、僕自身を強く縛り　つけていた。
@ENG:

@IDX:57430
@OFF:0x3cd2
@SPK:
@JPN:　何が御堂さんをそんな行為……病院を退職するなど　という行為に駆り立てたのだろうか。
@ENG:

@IDX:57431
@OFF:0x3d34
@SPK:
@JPN:　昨日までそんな素振りは微塵も見られなかった。
@ENG:

@IDX:57432
@OFF:0x3d70
@SPK:
@JPN:　それとも僕が気づかなかっただけなんだろうか。
@ENG:

@IDX:57433
@OFF:0x3dac
@SPK:
@JPN:　……いや、こんなことを考えても何もならない。
@ENG:

@IDX:57434
@OFF:0x3de8
@SPK:
@JPN:　御堂さんが辞めたという事実は変わらないし、それ　に対して僕にどうこう言う資格などないだろう。
@ENG:

@IDX:57435
@OFF:0x3e54
@SPK:
@JPN:　だが……せめて一言ぐらい言って欲しかった。
@ENG:

@IDX:57436
@OFF:0x3e9c
@SPK:
@JPN:　確かにそれほど親しいというわけではなかったが、　仕事上のパートナーであるということは事実だった　はずだ。
@ENG:

@IDX:57437
@OFF:0x3f14
@SPK:
@JPN:　僕の仕事には御堂さんの存在は欠かせなかったし、　それは御堂さんも理解していたはずだ。
@ENG:

@IDX:57438
@OFF:0x3f78
@SPK:
@JPN:　なのになぜ、突然辞めるなどという暴挙に出たのだ　ろう……。
@ENG:

@IDX:57439
@OFF:0x3fd2
@SPK:
@JPN:　……待てよ。
@ENG:

@IDX:57440
@OFF:0x3fee
@SPK:
@JPN:　もしかすると僕のせいなのか？
@ENG:

@IDX:57441
@OFF:0x401a
@SPK:
@JPN:　御堂さんが病院を去ったのは僕のせいなのか？
@ENG:

@IDX:57442
@OFF:0x4054
@SPK:
@JPN:　僕の担当をするのが嫌で……僕と一緒に働くのが嫌　で辞めたのか？
@ENG:

@IDX:57444
@OFF:0x40d6
@SPK:　そんなはずはない
@JPN:…
@ENG:

@IDX:57445
@OFF:0x40e4
@SPK:
@JPN:…
@ENG:

@IDX:57446
@OFF:0x40f8
@SPK:
@JPN:とは言い切れない。
@ENG:

@IDX:57447
@OFF:0x4118
@SPK:
@JPN:　確かに僕は不甲斐ない男だ。
@ENG:

@IDX:57448
@OFF:0x4142
@SPK:
@JPN:　多少のことでウジウジして、些細なことにビクビク　する。
@ENG:

@IDX:57449
@OFF:0x4188
@SPK:
@JPN:　だが、その程度のことで……。
@ENG:

@IDX:57450
@OFF:0x41c4
@SPK:
@JPN:　分からない。
@ENG:

@IDX:57451
@OFF:0x41e0
@SPK:
@JPN:　いくら考えても答えが出ない。
@ENG:

@IDX:57452
@OFF:0x420c
@SPK:
@JPN:　……いや、元々答えなど出るはずがないのだ。
@ENG:

@IDX:57453
@OFF:0x4246
@SPK:
@JPN:　御堂さん自身が何も語らなかった以上、そこに答え　など存在しないのだから。
@ENG:

@IDX:57454
@OFF:0x4359
@SPK:
@JPN:　そんな取り留めのないことをグルグルと考えている　と、いつしか目の前の光景もグルグルと回っている　ように見え始めた。
@ENG:

@IDX:57455
@OFF:0x43db
@SPK:
@JPN:　………………？
@ENG:

@IDX:57456
@OFF:0x43f9
@SPK:
@JPN:　なん、だ？　……確か……前にも同じようなことが　あった、よう、な…………。
@ENG:

@IDX:57457
@OFF:0x4529
@SPK:
@JPN:　…
@ENG:

@IDX:57458
@OFF:0x4539
@SPK:
@JPN:…
@ENG:

@IDX:57459
@OFF:0x4547
@SPK:
@JPN:…
@ENG:

@IDX:57460
@OFF:0x4555
@SPK:
@JPN:…
@ENG:

@IDX:57461
@OFF:0x4563
@SPK:
@JPN:…
@ENG:

@IDX:57462
@OFF:0x4571
@SPK:
@JPN:…
@ENG:

@IDX:57463
@OFF:0x457f
@SPK:
@JPN:ん。
@ENG:

@IDX:57464
@OFF:0x4609
@SPK:
@JPN:　あれ……？
@ENG:

@IDX:57465
@OFF:0x4623
@SPK:
@JPN:　ここは……？
@ENG:

@IDX:57466
@OFF:0x463f
@SPK:
@JPN:　一体僕はどうしたんだ……？
@ENG:

@IDX:57467
@OFF:0x467d
@SPK:
@JPN:　気がつくと僕はどこかの診察室で横になっていた。　
@ENG:

@IDX:57468
@OFF:0x46cf
@SPK:
@JPN:　頭がズキズキと痛み、吐き気がする。
@ENG:

@IDX:57469
@OFF:0x4701
@SPK:
@JPN:　この症状は……。
@ENG:

@IDX:57470
@OFF:0x4731
@SPK:
@JPN:　朧がかかったような頭を必死に巡らせる。
@ENG:

@IDX:57471
@OFF:0x4767
@SPK:
@JPN:　ミーティング……副院長の話……中庭……。
@ENG:

@IDX:57472
@OFF:0x479f
@SPK:
@JPN:　………………そうか。
@ENG:

@IDX:57473
@OFF:0x47c3
@SPK:
@JPN:　多分……僕は熱中症になったのだろう。
@ENG:

@IDX:57474
@OFF:0x480b
@SPK:
@JPN:　そう自覚した途端、強烈な喉の渇きに襲われた。
@ENG:

@IDX:57475
@OFF:0x4857
@SPK:
@JPN:　どうやら脱水症状まで起こしていたようだ。
@ENG:

@IDX:57476
@OFF:0x488f
@SPK:
@JPN:　カサカサに乾いた唇。
@ENG:

@IDX:57477
@OFF:0x48b3
@SPK:
@JPN:　全身を覆う倦怠感。
@ENG:

@IDX:57478
@OFF:0x48d5
@SPK:
@JPN:　身体を起こそうとしても、まるで力が入らない。
@ENG:

@IDX:57479
@OFF:0x492f
@SPK:
@JPN:　小さな扉の音が、やけにはっきりと耳に届く。
@ENG:

@IDX:57480
@OFF:0x4969
@SPK:
@JPN:　頭はボーッとしているのに、なぜだか聴覚は鋭敏に　働いているようだった。
@ENG:

@IDX:57481
@OFF:0x49bf
@SPK:
@JPN:　いや、聴覚だけじゃない。
@ENG:

@IDX:57482
@OFF:0x49e7
@SPK:
@JPN:　嗅覚も鋭くなっているようだ。
@ENG:

@IDX:57483
@OFF:0x4a23
@SPK:
@JPN:　診察室の無機質な香りに、甘い香りが混じる。
@ENG:

@IDX:57484
@OFF:0x4a5d
@SPK:
@JPN:　甘く爽やかな匂い。
@ENG:

@IDX:57485
@OFF:0x4a7f
@SPK:
@JPN:　甘さの中に微かな酸味を備えた、花梨のような清々　しい香り。
@ENG:

@IDX:57486
@OFF:0x4adb
@SPK:
@JPN:　僕はこの香りを知っている。
@ENG:

@IDX:57487
@OFF:0x4b05
@SPK:
@JPN:　僕はこの香りの持ち主を知っている。
@ENG:

@IDX:57488
@OFF:0x4b37
@SPK:
@JPN:　僕はこの香りとともに働いたことがある。
@ENG:

@IDX:57489
@OFF:0x4b81
@SPK:
@JPN:　この香りの持ち主は……。
@ENG:

@IDX:57491
@OFF:0x4bf8
@SPK:［女の声］
@JPN:　よかった。気がついたんだね。
@ENG:

@IDX:57492
@OFF:0x4cb6
@SPK:
@JPN:　彼女が入ってきただけで無機質な診察室の雰囲気が　一変した。
@ENG:

@IDX:57493
@OFF:0x4d00
@SPK:
@JPN:　副院長の妖艶さ、御堂さんの清純さ、真魚の奔放さ　……それらとは違った魅力を持つ女性。
@ENG:

@IDX:57494
@OFF:0x4d64
@SPK:
@JPN:　真田さんの姿がそこにはあった。
@ENG:

@IDX:57496
@OFF:0x4e4d
@SPK:［美和子］
@JPN:　ダメだよ？　この季節は日差しに気をつけないと。
@ENG:

@IDX:57497
@OFF:0x4ead
@SPK:
@JPN:　そう言って僕に飲み物を差し出す。
@ENG:

@IDX:57498
@OFF:0x4edd
@SPK:
@JPN:　眩しい笑顔に導かれるように、汗を掻いた容器を受　け取る。
@ENG:

@IDX:57499
@OFF:0x4f25
@SPK:
@JPN:　ひんやりとした感触が、指先から脳髄まで伝わり、　涼やかな感じが全身を包み込む。
@ENG:

@IDX:57500
@OFF:0x4f83
@SPK:
@JPN:　それだけでも、全身の倦怠感が癒されるような感じ　がした。
@ENG:

@IDX:57501
@OFF:0x4fdd
@SPK:
@JPN:　液体を一口含み、ゆっくりと喉に流し込む。
@ENG:

@IDX:57502
@OFF:0x5015
@SPK:
@JPN:　渇ききった身体に水分が染み込んでいく。
@ENG:

@IDX:57503
@OFF:0x5059
@SPK:
@JPN:　真田さんは、そんな僕の様子を心配そうな顔で見つ　めている。
@ENG:

@IDX:57504
@OFF:0x50a3
@SPK:
@JPN:　彼女のこんな表情は見たことがなかった。
@ENG:

@IDX:57505
@OFF:0x50d9
@SPK:
@JPN:　彼女はいつも明るくしていた。
@ENG:

@IDX:57506
@OFF:0x5105
@SPK:
@JPN:　太陽のような笑顔。
@ENG:

@IDX:57507
@OFF:0x5127
@SPK:
@JPN:　僕の記憶の中には、そんな顔をした真田さんしかい　なかった。
@ENG:

@IDX:57510
@OFF:0x51ad
@SPK:[\protag]
@JPN:　ふう……。
@ENG:

@IDX:57512
@OFF:0x51fe
@SPK:［美和子］
@JPN:　どうかしたの？　あんなところで熱中症になるなんて……キミらしくないんじゃない？
@ENG:

@IDX:57515
@OFF:0x5284
@SPK:[\protag]
@JPN:　すみません……。
@ENG:

@IDX:57517
@OFF:0x52db
@SPK:［美和子］
@JPN:　大丈夫？　まだ気分悪い？
@ENG:

@IDX:57520
@OFF:0x532b
@SPK:[\protag]
@JPN:　いえ、もうだいぶ落ち着きましたから、少し休めば大丈夫だと思います。
@ENG:

@IDX:57522
@OFF:0x53b4
@SPK:［美和子］
@JPN:　そう……キミがそう言うんならいいんだけど。
@ENG:

@IDX:57525
@OFF:0x5416
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:57527
@OFF:0x5467
@SPK:［美和子］
@JPN:　どうかした？　やっぱり気分悪い？
@ENG:

@IDX:57530
@OFF:0x54bf
@SPK:[\protag]
@JPN:　いえ。そういうんじゃないんです。ただ……。
@ENG:

@IDX:57532
@OFF:0x55a6
@SPK:［美和子］
@JPN:　ただ？
@ENG:

@IDX:57535
@OFF:0x55e4
@SPK:[\protag]
@JPN:　またやっちゃったなって……。
@ENG:

@IDX:57537
@OFF:0x5647
@SPK:［美和子］
@JPN:　またって？
@ENG:

@IDX:57540
@OFF:0x5689
@SPK:[\protag]
@JPN:　昨日もやっちゃったんです。正確には熱中症になりかけたってだけなんですけど。
@ENG:

@IDX:57541
@OFF:0x5705
@SPK:
@JPN:　僕の心に影が差した。
@ENG:

@IDX:57542
@OFF:0x5729
@SPK:
@JPN:　昨日も熱中症になりかけた。
@ENG:

@IDX:57543
@OFF:0x5753
@SPK:
@JPN:　その時は御堂さんに助けてもらった。
@ENG:

@IDX:57544
@OFF:0x5785
@SPK:
@JPN:　でも……もう彼女はいない。
@ENG:

@IDX:57545
@OFF:0x57af
@SPK:
@JPN:　彼女は病院を辞めてしまった。
@ENG:

@IDX:57546
@OFF:0x57db
@SPK:
@JPN:　何も言わずに僕の前から去って行ってしまった。
@ENG:

@IDX:57548
@OFF:0x58d2
@SPK:［美和子］
@JPN:　…………もしかして、何か悩み事？
@ENG:

@IDX:57551
@OFF:0x592a
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？　どうしてですか？
@ENG:

@IDX:57553
@OFF:0x5987
@SPK:［美和子］
@JPN:　だって、なんだか暗いもの。
@ENG:

@IDX:57556
@OFF:0x59d9
@SPK:[\protag]
@JPN:　僕は……暗く見えますか？
@ENG:

@IDX:57558
@OFF:0x5a38
@SPK:［美和子］
@JPN:　そうね……身体だけじゃなくて、心まで重くなっちゃってるって感じがする。周りの空気まで暗くなってるみたいに見えるわ。
@ENG:

@IDX:57561
@OFF:0x5ae2
@SPK:[\protag]
@JPN:　周りの空気まで……。
@ENG:

@IDX:57563
@OFF:0x5b3d
@SPK:［美和子］
@JPN:　もしかして熱中症の原因もそれなんじゃないの？
@ENG:

@IDX:57566
@OFF:0x5ba1
@SPK:[\protag]
@JPN:　えっ？
@ENG:

@IDX:57568
@OFF:0x5bee
@SPK:［美和子］
@JPN:　日向のベンチに腰かけて、時間が経つのも気にせずに考え込む……いかにもキミらしい感じはするけど。
@ENG:

@IDX:57571
@OFF:0x5c84
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………僕らしい……ですか。
@ENG:

@IDX:57573
@OFF:0x5ce7
@SPK:［美和子］
@JPN:　ねえ、よかったら私に相談してみない？　人に話せば少しは楽になるんじゃないかな。キミが嫌だって言うんなら無理には聞かないけど。
@ENG:

@IDX:57576
@OFF:0x5d9b
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:57578
@OFF:0x5e62
@SPK:［美和子］
@JPN:　どうかな？
@ENG:

@IDX:57581
@OFF:0x5ea4
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:57583
@OFF:0x5ef5
@SPK:［美和子］
@JPN:　私の顔見てたって、悩みは解決しないよ？
@ENG:

@IDX:57586
@OFF:0x5f53
@SPK:[\protag]
@JPN:　そうですね……僕の話聞いてもらえますか？
@ENG:

@IDX:57588
@OFF:0x6038
@SPK:［美和子］
@JPN:　もちろんよ。私、こう見えても口が堅いんだから。タイタニックにでも乗った気持ちでどんどん相談してちょうだい。
@ENG:

@IDX:57589
@OFF:0x60d0
@SPK:
@JPN:　そう言って真田さんはいつもの笑顔を浮かべる。
@ENG:

@IDX:57590
@OFF:0x610c
@SPK:
@JPN:　眩しい真田さんの笑顔。
@ENG:

@IDX:57591
@OFF:0x6132
@SPK:
@JPN:　暗く沈みかけていた僕の心に、一筋の光が差し込ん　できた。
@ENG:

@IDX:57592
@OFF:0x617a
@SPK:
@JPN:　真田さんのタイタニックは、おそらく沈むことなど　ないのだろう。
@ENG:

@IDX:57593
@OFF:0x61c8
@SPK:
@JPN:　死体洗いという非日常の中で、荒みかけていた僕の　心を、柔らかく癒してくれる。
@ENG:

@IDX:57594
@OFF:0x6224
@SPK:
@JPN:　その笑顔だけで、心の隙間が少し埋められたような　気がした。
@ENG:

@IDX:57595
@OFF:0x62d9
@SPK:
@JPN:　仕事の内容には触れないようにしながら、僕の心を　悩ませている問題について、真田さんに話した。
@ENG:

@IDX:57596
@OFF:0x6345
@SPK:
@JPN:　僕の仕事には担当の看護婦がいるということ。
@ENG:

@IDX:57597
@OFF:0x637f
@SPK:
@JPN:　その看護婦をいかに信用していたかということ。
@ENG:

@IDX:57598
@OFF:0x63bb
@SPK:
@JPN:　彼女が突然辞めてしまったということ。
@ENG:

@IDX:57599
@OFF:0x63ef
@SPK:
@JPN:　辞めた理由が全く分からないということ。
@ENG:

@IDX:57600
@OFF:0x6435
@SPK:
@JPN:　仕事の内容には守秘義務があると言われた。
@ENG:

@IDX:57601
@OFF:0x646d
@SPK:
@JPN:　だが、僕自身の人間関係まで守秘義務が適用されて　いるとは思えない。
@ENG:

@IDX:57602
@OFF:0x64bf
@SPK:
@JPN:　……注意を受けたとしたら、その時はその時だ。
@ENG:

@IDX:57604
@OFF:0x65fa
@SPK:［美和子］
@JPN:　ふ～ん、信用してた人が辞めちゃったんだ。
@ENG:

@IDX:57607
@OFF:0x665a
@SPK:[\protag]
@JPN:　そうなんです。最近ようやく信頼関係が築けたと思っていたんで余計にショックで……。
@ENG:

@IDX:57610
@OFF:0x66e2
@SPK:[\protag]
@JPN:　別に彼女を責める気はないんですけど、どうして辞めちゃったのかなぁって……。
@ENG:

@IDX:57613
@OFF:0x6764
@SPK:[\protag]
@JPN:　僕に何か落ち度があったのか……僕が何か気に障るようなことでもしたのか……。
@ENG:

@IDX:57616
@OFF:0x67e6
@SPK:[\protag]
@JPN:　そんなことをグルグル考えちゃうんです……自分でも分かってはいるんです。そんなこと考えたってしょうがないって。
@ENG:

@IDX:57619
@OFF:0x688a
@SPK:[\protag]
@JPN:　でも、ダメなんです……どうしても考えちゃうんです。
@ENG:

@IDX:57621
@OFF:0x6903
@SPK:［美和子］
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:57622
@OFF:0x6941
@SPK:
@JPN:　真田さんは僕の話をただ黙って聞いている。
@ENG:

@IDX:57623
@OFF:0x6979
@SPK:
@JPN:　何も答えてはくれないのだろうか。
@ENG:

@IDX:57624
@OFF:0x69a9
@SPK:
@JPN:　何かアドバイスをしてはくれないのだろうか。
@ENG:

@IDX:57625
@OFF:0x69e3
@SPK:
@JPN:　僕をこの思考の迷宮から救い出してくれる、なにか　いいアドバイスを……。
@ENG:

@IDX:57627
@OFF:0x6af4
@SPK:［美和子］
@JPN:　それでキミはどうしたいの？
@ENG:

@IDX:57630
@OFF:0x6b46
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？
@ENG:

@IDX:57631
@OFF:0x6b7e
@SPK:
@JPN:　真田さんの突然の問いかけ。
@ENG:

@IDX:57632
@OFF:0x6ba8
@SPK:
@JPN:　僕はどうしたいのか……。
@ENG:

@IDX:57633
@OFF:0x6bd0
@SPK:
@JPN:　問われて初めて考えた。
@ENG:

@IDX:57634
@OFF:0x6bf6
@SPK:
@JPN:　僕はどうしたいのか……。
@ENG:

@IDX:57635
@OFF:0x6c2c
@SPK:
@JPN:　御堂さんに戻ってきて欲しいのか？
@ENG:

@IDX:57636
@OFF:0x6c5c
@SPK:
@JPN:　……否。それほど御堂さんの担当にこだわっている　わけではない。
@ENG:

@IDX:57637
@OFF:0x6caa
@SPK:
@JPN:　御堂さんに辞めた理由を話してもらいたいのか？
@ENG:

@IDX:57638
@OFF:0x6ce6
@SPK:
@JPN:　……確かに聞きたい気持ちもあるかもしれない。
@ENG:

@IDX:57639
@OFF:0x6d22
@SPK:
@JPN:　聞けばすっきりするのかもしれない。
@ENG:

@IDX:57642
@OFF:0x6d90
@SPK:[\protag]
@JPN:　僕は……彼女に辞めた理由を聞きたいです。
@ENG:

@IDX:57644
@OFF:0x6dff
@SPK:［美和子］
@JPN:　そう。じゃあ、聞けばいいのよ。その人から辞めた理由を。
@ENG:

@IDX:57647
@OFF:0x6e6d
@SPK:[\protag]
@JPN:　でも、今どこにいるか分からないんです。
@ENG:

@IDX:57649
@OFF:0x6eda
@SPK:［美和子］
@JPN:　探せばいいじゃない。聞きたいんでしょ？　辞めた理由。
@ENG:

@IDX:57652
@OFF:0x6f46
@SPK:[\protag]
@JPN:　だからって……。
@ENG:

@IDX:57654
@OFF:0x6f9d
@SPK:［美和子］
@JPN:　どこにいるか見つけ出して理由を聞く。簡単じゃない？　何を迷ってるの？
@ENG:

@IDX:57657
@OFF:0x7019
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………彼女が何も言わなかったのは何か僕に言えない理由があったからだと思うんです。だったら無理に探したりしない方が彼女のためなんじゃないかなって……。
@ENG:

@IDX:57659
@OFF:0x70f6
@SPK:［美和子］
@JPN:　分かってるんじゃない。その人が辞めた理由。
@ENG:

@IDX:57662
@OFF:0x7158
@SPK:[\protag]
@JPN:　僕が……理由を、分かってる？
@ENG:

@IDX:57664
@OFF:0x71bb
@SPK:［美和子］
@JPN:　その人はキミに言えない理由があって辞めた。そしてキミはそのことを理解している。
@ENG:

@IDX:57666
@OFF:0x72c6
@SPK:［美和子］
@JPN:　だったらいいじゃない、それで。
@ENG:

@IDX:57667
@OFF:0x7312
@SPK:
@JPN:　御堂さんが辞めた理由。
@ENG:

@IDX:57668
@OFF:0x7338
@SPK:
@JPN:　それは僕には言えないこと。
@ENG:

@IDX:57669
@OFF:0x7362
@SPK:
@JPN:　彼女の性格からして、大した理由もなく仕事を辞め　るとは考えられない。
@ENG:

@IDX:57670
@OFF:0x73b6
@SPK:
@JPN:　つまり、僕には言えないけれどなにか辞めざるを得　ない理由があったということだ。
@ENG:

@IDX:57671
@OFF:0x7414
@SPK:
@JPN:　だったら僕が取るべき道は一つ。
@ENG:

@IDX:57672
@OFF:0x7442
@SPK:
@JPN:　これ以上このことにこだわるのはやめる。
@ENG:

@IDX:57673
@OFF:0x7478
@SPK:
@JPN:　それが一番いいことだろう。
@ENG:

@IDX:57674
@OFF:0x74a2
@SPK:
@JPN:　僕にとっても、御堂さんにとっても。
@ENG:

@IDX:57676
@OFF:0x758f
@SPK:［美和子］
@JPN:　どうやら、決着がついたみたいね。
@ENG:

@IDX:57679
@OFF:0x75e7
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？
@ENG:

@IDX:57681
@OFF:0x7632
@SPK:［美和子］
@JPN:　表情が明るくなった。空気も軽くなったし。
@ENG:

@IDX:57684
@OFF:0x7692
@SPK:[\protag]
@JPN:　そうですか？　自分ではよく分かりませんけど。
@ENG:

@IDX:57686
@OFF:0x777b
@SPK:［美和子］
@JPN:　すっきりした顔してるよ？　まるでお風呂上りみたい……って言うのはちょっと違うかな。とにかく晴れ晴れした感じがする。
@ENG:

@IDX:57689
@OFF:0x7825
@SPK:[\protag]
@JPN:　もしそうなら、真田さんのおかげです。ありがとうございました。
@ENG:

@IDX:57691
@OFF:0x791e
@SPK:［美和子］
@JPN:　お礼なんて言わないで。私はキミの話を聞いただけなんだから……で、結局どうすることにしたの？
@ENG:

@IDX:57694
@OFF:0x79b0
@SPK:[\protag]
@JPN:　……もういいんです。
@ENG:

@IDX:57696
@OFF:0x7a81
@SPK:［美和子］
@JPN:　もういい？
@ENG:

@IDX:57699
@OFF:0x7ac3
@SPK:[\protag]
@JPN:　もうこのことにこだわるのはやめにしました。
@ENG:

@IDX:57701
@OFF:0x7b34
@SPK:［美和子］
@JPN:　それでいいの？
@ENG:

@IDX:57704
@OFF:0x7b7a
@SPK:[\protag]
@JPN:　ええ、いいんです。
@ENG:

@IDX:57707
@OFF:0x7bc4
@SPK:[\protag]
@JPN:　彼女が黙って出て行ったのは、そうしなければいけない理由があったからなんだと思います。だったら僕も黙って見送るべきだなって……。
@ENG:

@IDX:57709
@OFF:0x7cff
@SPK:［美和子］
@JPN:　そっか。本当にその人のこと信頼してるんだね。
@ENG:

@IDX:57712
@OFF:0x7d63
@SPK:[\protag]
@JPN:　そう……ですね。
@ENG:

@IDX:57714
@OFF:0x7e30
@SPK:［美和子］
@JPN:　なんだか妬けちゃうな……。
@ENG:

@IDX:57717
@OFF:0x7e82
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？
@ENG:

@IDX:57719
@OFF:0x7f43
@SPK:［美和子］
@JPN:　う、ううん！　な、なんでもないの、なんでも。
@ENG:

@IDX:57722
@OFF:0x7fa7
@SPK:[\protag]
@JPN:　はあ……。
@ENG:

@IDX:57724
@OFF:0x806e
@SPK:［美和子］
@JPN:　そ、そんなことより、気分はもういいの？
@ENG:

@IDX:57727
@OFF:0x80cc
@SPK:[\protag]
@JPN:　気分……ですか？　そう言えば熱中症でここに運ばれたんでしたね。全然忘れてました。
@ENG:

@IDX:57729
@OFF:0x81d9
@SPK:［美和子］
@JPN:　忘れてたってことは、もう大丈夫か。
@ENG:

@IDX:57732
@OFF:0x8233
@SPK:[\protag]
@JPN:　ええ、ピンピンしてます。
@ENG:

@IDX:57733
@OFF:0x8281
@SPK:
@JPN:　腰かけていた寝台から立ち上がり、ガッツポーズを　決めてみせる。
@ENG:

@IDX:57736
@OFF:0x8319
@SPK:[\protag]
@JPN:　！！！！
@ENG:

@IDX:57738
@OFF:0x8424
@SPK:［美和子］
@JPN:　ぷっ！
@ENG:

@IDX:57739
@OFF:0x845e
@SPK:
@JPN:　絶妙なタイミングで腹の虫が鳴き声をあげた。
@ENG:

@IDX:57740
@OFF:0x8498
@SPK:
@JPN:　吹き出す真田さん。
@ENG:

@IDX:57741
@OFF:0x84ba
@SPK:
@JPN:　赤面する僕。
@ENG:

@IDX:57742
@OFF:0x84d6
@SPK:
@JPN:　現金な身体だ。
@ENG:

@IDX:57743
@OFF:0x84f4
@SPK:
@JPN:　体調が回復した途端に、空腹を訴えてきた。
@ENG:

@IDX:57745
@OFF:0x8577
@SPK:［美和子］
@JPN:　クスクスクス、もしかしてお昼食べてないの？
@ENG:

@IDX:57748
@OFF:0x85d9
@SPK:[\protag]
@JPN:　ええ、まあ……でもお昼にはまだ早いんじゃないんですか………………って、あれ？
@ENG:

@IDX:57750
@OFF:0x866c
@SPK:［美和子］
@JPN:　あれ？　って、いま頃気づいたの？　キミ、かなり長い間気絶してたんだよ？
@ENG:

@IDX:57751
@OFF:0x86e8
@SPK:
@JPN:　中庭に出たのが９時少し前。
@ENG:

@IDX:57752
@OFF:0x8712
@SPK:
@JPN:　なのに今はもうお昼を過ぎている。
@ENG:

@IDX:57753
@OFF:0x8742
@SPK:
@JPN:　僕は、そんなに長い間気絶してたのか。
@ENG:

@IDX:57755
@OFF:0x8831
@SPK:［美和子］
@JPN:　お腹が減ってきたんならもう大丈夫だね。
@ENG:

@IDX:57758
@OFF:0x888f
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:57760
@OFF:0x8956
@SPK:［美和子］
@JPN:　どうしたの？　また気持ち悪くなった？
@ENG:

@IDX:57763
@OFF:0x89b2
@SPK:[\protag]
@JPN:　ビックリしてるんです。
@ENG:

@IDX:57765
@OFF:0x8a0f
@SPK:［美和子］
@JPN:　ビックリ？
@ENG:

@IDX:57768
@OFF:0x8a51
@SPK:[\protag]
@JPN:　いつの間にかこんなに時間が経ってて……。こんな長い間気絶してたなんて、思わなかったから。
@ENG:

@IDX:57770
@OFF:0x8b66
@SPK:［美和子］
@JPN:　ふ～ん。でもビックリする必要ないと思うよ。
@ENG:

@IDX:57773
@OFF:0x8bc8
@SPK:[\protag]
@JPN:　どうしてですか？
@ENG:

@IDX:57775
@OFF:0x8c1f
@SPK:［美和子］
@JPN:　だって、いつもはもっと長いでしょ？
@ENG:

@IDX:57778
@OFF:0x8c79
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？　いつも？　気絶なんてそうそうしないと思いますけど？
@ENG:

@IDX:57780
@OFF:0x8cf8
@SPK:［美和子］
@JPN:　違う違う、気絶じゃなくて睡眠。
@ENG:

@IDX:57783
@OFF:0x8d4e
@SPK:[\protag]
@JPN:　睡眠？
@ENG:

@IDX:57785
@OFF:0x8d9b
@SPK:［美和子］
@JPN:　寝て起きたら何時間も経ってるでしょ？
@ENG:

@IDX:57788
@OFF:0x8df7
@SPK:[\protag]
@JPN:　……そうですけど……。
@ENG:

@IDX:57790
@OFF:0x8e54
@SPK:［美和子］
@JPN:　いいの、いいの。難しく考えないの。それじゃあ、私は仕事に戻るね。またね、バイト君！
@ENG:

@IDX:57791
@OFF:0x8ef8
@SPK:
@JPN:　そう言って真田さんは診察室から出て行った。
@ENG:

@IDX:57792
@OFF:0x8f32
@SPK:
@JPN:　……気絶と睡眠……。
@ENG:

@IDX:57793
@OFF:0x8f56
@SPK:
@JPN:　かなり違うような気がするんですけど……。
@ENG:

@IDX:57795
@OFF:0x90e4
@SPK:［真魚］
@JPN:　……今日の遺体はそんな感じ。それじゃあ作業始めちゃって。
@ENG:

@IDX:57798
@OFF:0x9154
@SPK:[\protag]
@JPN:　分かった。
@ENG:

@IDX:57799
@OFF:0x91b6
@SPK:
@JPN:　夜のミーティングには、副院長の言葉通り、真魚が　現れた。
@ENG:

@IDX:57800
@OFF:0x91fe
@SPK:
@JPN:　どことなく暗い表情をしていたが、御堂さんのこと　には全く触れようとしなかった。
@ENG:

@IDX:57801
@OFF:0x926a
@SPK:
@JPN:　もうこだわらない。
@ENG:

@IDX:57802
@OFF:0x928c
@SPK:
@JPN:　そう決めた以上、僕から御堂さんの話題を振るべき　ではないと思った。
@ENG:

@IDX:57803
@OFF:0x92de
@SPK:
@JPN:　おそらく今の真魚は心の中を整理している段階。
@ENG:

@IDX:57804
@OFF:0x931a
@SPK:
@JPN:　無闇に話しかけない方がいい。
@ENG:

@IDX:57805
@OFF:0x9346
@SPK:
@JPN:　真魚に必要なのは僕の助言よりも時間だろう。
@ENG:

@IDX:57806
@OFF:0x9443
@SPK:
@JPN:　仕事場に入ると、すぐに作業を開始する。
@ENG:

@IDX:57807
@OFF:0x9479
@SPK:
@JPN:　真魚の説明通りなら、今日の死体は女性が１体。
@ENG:

@IDX:57808
@OFF:0x94b5
@SPK:
@JPN:　傷はない……はずだ。
@ENG:

@IDX:57809
@OFF:0x94e9
@SPK:
@JPN:　引き上げた死体は、なかなかの美人だった。
@ENG:

@IDX:57810
@OFF:0x9521
@SPK:
@JPN:　静かに瞑る二重瞼、涼しげな鼻梁、柔らかそうな唇　……多少頬がこけているが、美しい顔立ち。
@ENG:

@IDX:57811
@OFF:0x9589
@SPK:
@JPN:　身体も同様に、見事な女性美を表している。
@ENG:

@IDX:57812
@OFF:0x95d3
@SPK:
@JPN:　だが、どんなに美しかろうが死体は死体……。
@ENG:

@IDX:57813
@OFF:0x960d
@SPK:
@JPN:　こんなものを眺めて悦に入る趣味はない。
@ENG:

@IDX:57814
@OFF:0x9643
@SPK:
@JPN:　さっさと洗って、さっさと終わらせよう。
@ENG:

@IDX:57815
@OFF:0x96e7
@SPK:
@JPN:　作業は順調に進んでいく。
@ENG:

@IDX:57816
@OFF:0x970f
@SPK:
@JPN:　腹、胸、顔、股間……。
@ENG:

@IDX:57817
@OFF:0x9735
@SPK:
@JPN:　黙々と、そして淡々と作業を進めていく。
@ENG:

@IDX:57818
@OFF:0x9779
@SPK:
@JPN:　背中になってもそれは同様。
@ENG:

@IDX:57819
@OFF:0x97a3
@SPK:
@JPN:　身体の重みで潰された乳房がまったく気にならない　と言えば嘘になるが、できるだけそのことを頭から　追い出し、休めずに手を動かし続ける。
@ENG:

@IDX:57820
@OFF:0x9837
@SPK:
@JPN:　背中……耳の裏……脇の下……尻の間……。
@ENG:

@IDX:57821
@OFF:0x986f
@SPK:
@JPN:　確実に作業は終息に向かっていく。
@ENG:

@IDX:57822
@OFF:0x9962
@SPK:
@JPN:　そして……思っていたほど時間もかからず、全ての　部位を洗い終えた。
@ENG:

@IDX:57823
@OFF:0x99b4
@SPK:
@JPN:　最後の水洗いを終えてから鏑木さんを呼んで、再び　死体の側へと戻る。
@ENG:

@IDX:57824
@OFF:0x9a88
@SPK:
@JPN:　見事に傷一つない身体が足下に横たわっている。
@ENG:

@IDX:57825
@OFF:0x9ac4
@SPK:
@JPN:　酷い死体ばかり続いたせいで、もう気持ち悪いとも　思わない。
@ENG:

@IDX:57826
@OFF:0x9b0e
@SPK:
@JPN:　緊張も嫌悪もない。
@ENG:

@IDX:57827
@OFF:0x9b30
@SPK:
@JPN:　路傍の石ころと同じように、ただそこにあるだけの　もの……。
@ENG:

@IDX:57828
@OFF:0x9b7a
@SPK:
@JPN:　平然と見続けることができる。
@ENG:

@IDX:57829
@OFF:0x9bb6
@SPK:
@JPN:　鏑木さんも同じ心境なのだろうか？
@ENG:

@IDX:57830
@OFF:0x9be6
@SPK:
@JPN:　何の感情も情動もなく、死体を単なる物として扱う　心理……。
@ENG:

@IDX:57831
@OFF:0x9c30
@SPK:
@JPN:　後で来たら聞いてみよう……。
@ENG:

@IDX:57834
@OFF:0x9cb0
@SPK:[\protag]
@JPN:　……あん？
@ENG:

@IDX:57835
@OFF:0x9cf0
@SPK:
@JPN:　突然足下から、耳障りな音が響いた。
@ENG:

@IDX:57836
@OFF:0x9d22
@SPK:
@JPN:　脱力しきったゲップにも似た音……。
@ENG:

@IDX:57837
@OFF:0x9d54
@SPK:
@JPN:　いったい何の音だ？
@ENG:

@IDX:57838
@OFF:0x9de2
@SPK:
@JPN:　音の発生源は僕ではない……。
@ENG:

@IDX:57839
@OFF:0x9e0e
@SPK:
@JPN:　この部屋の中で音を発しそうなものは数少ない。
@ENG:

@IDX:57840
@OFF:0x9e4a
@SPK:
@JPN:　僕が音を発していないのだから、答えは一つ。
@ENG:

@IDX:57841
@OFF:0x9f08
@SPK:
@JPN:　こいつだ。
@ENG:

@IDX:57842
@OFF:0x9f22
@SPK:
@JPN:　どこからあんな音が出たんだ？
@ENG:

@IDX:57843
@OFF:0x9f4e
@SPK:
@JPN:　いくら考えてもよく分からない。
@ENG:

@IDX:57844
@OFF:0x9f7c
@SPK:
@JPN:　…………まあいい。
@ENG:

@IDX:57845
@OFF:0x9f9e
@SPK:
@JPN:　とにかく鏑木さんが来るのを待とう。
@ENG:

@IDX:57847
@OFF:0xa12a
@SPK:［鏑木］
@JPN:　よお、ずいぶん早いじゃないか。
@ENG:

@IDX:57850
@OFF:0xa180
@SPK:[\protag]
@JPN:　そうですか？
@ENG:

@IDX:57852
@OFF:0xa1d1
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ああ、自己ベストを更新したんじゃないか？
@ENG:

@IDX:57855
@OFF:0xa231
@SPK:[\protag]
@JPN:　自己ベストって……タイムなんか計ってませんよ。
@ENG:

@IDX:57857
@OFF:0xa2a4
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ハハハ、そりゃそうだ。じゃあ、確認しちまうから、ちょっと待っててくれ。
@ENG:

@IDX:57858
@OFF:0xa32c
@SPK:
@JPN:　自分でもわりと早く洗えたような気がしていたが、　鏑木さんに言われるということは、本当に早かった　のだろう。
@ENG:

@IDX:57859
@OFF:0xa3a6
@SPK:
@JPN:　こんな仕事でも、褒められれば素直に嬉しい。
@ENG:

@IDX:57860
@OFF:0xa3f2
@SPK:
@JPN:　ふと、疑問が湧いてきた。
@ENG:

@IDX:57861
@OFF:0xa41a
@SPK:
@JPN:　……死体が早く洗えたことを褒められて嬉しがるの　は不謹慎だろうか？
@ENG:

@IDX:57862
@OFF:0xa47e
@SPK:
@JPN:　そんなことを考えていると、洗い終えた死体の確認　をしていた鏑木さんが戻ってきた。
@ENG:

@IDX:57863
@OFF:0xa4de
@SPK:
@JPN:　表情を見る限り、きれいに洗えていたようだ。
@ENG:

@IDX:57865
@OFF:0xa5cd
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ＯＫだ。早くてきれい。もう安心して仕事を任せられるな。
@ENG:

@IDX:57868
@OFF:0xa63b
@SPK:[\protag]
@JPN:　ありがとうございます……それで、質問があるんですけどいいですか？
@ENG:

@IDX:57870
@OFF:0xa73a
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ん？　なんだ？
@ENG:

@IDX:57873
@OFF:0xa780
@SPK:[\protag]
@JPN:　さっき、変な音が聞こえたんですよ。『あ゛～』って感じで。たぶん死体が出した音だと思うんですけど……そんなことってあるんですか？
@ENG:

@IDX:57875
@OFF:0xa843
@SPK:［鏑木］
@JPN:　変な音？　死体が？
@ENG:

@IDX:57878
@OFF:0xa88d
@SPK:[\protag]
@JPN:　ええ。聞いたことありませんか？
@ENG:

@IDX:57880
@OFF:0xa8f0
@SPK:［鏑木］
@JPN:　う～ん……俺は聞いたことないな……。
@ENG:

@IDX:57883
@OFF:0xa94c
@SPK:[\protag]
@JPN:　鏑木さんが知らないんじゃ、僕の空耳かもしれませんね。
@ENG:

@IDX:57885
@OFF:0xa9c5
@SPK:［鏑木］
@JPN:　あっ！　いや、ちょっと待て。そう言えば、似たような話を聞いた覚えがある。その音って、ゲップみたいな音か？
@ENG:

@IDX:57888
@OFF:0xaa65
@SPK:[\protag]
@JPN:　ええ、そうです。
@ENG:

@IDX:57890
@OFF:0xaaba
@SPK:［鏑木］
@JPN:　多分それはあれだ。死体からガスが抜ける音だ。
@ENG:

@IDX:57893
@OFF:0xab1e
@SPK:[\protag]
@JPN:　ガス？
@ENG:

@IDX:57895
@OFF:0xab69
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ああ。何のガスかは知らんが、腹腔内に溜まったガスが抜ける時にそんな音がするらしい。
@ENG:

@IDX:57898
@OFF:0xabf3
@SPK:[\protag]
@JPN:　腹腔内に溜まったガス……って、ゲップとかおならと一緒ってことですか？
@ENG:

@IDX:57900
@OFF:0xac7c
@SPK:［鏑木］
@JPN:　まあ、大した違いはないな。
@ENG:

@IDX:57903
@OFF:0xacce
@SPK:[\protag]
@JPN:　へぇ……死体もゲップをするんですね。
@ENG:

@IDX:57905
@OFF:0xad37
@SPK:［鏑木］
@JPN:　だが、おかしいな。ここに送られてくる死体ならガスが溜まってるわけはないんだがな……。
@ENG:

@IDX:57908
@OFF:0xadc3
@SPK:[\protag]
@JPN:　そうなんですか？　でも、別に大したことじゃありませんよ。噛みついたりするわけじゃないんですから。
@ENG:

@IDX:57910
@OFF:0xaede
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ほう……お前もだいぶ余裕が出てきたな。
@ENG:

@IDX:57913
@OFF:0xaf3c
@SPK:[\protag]
@JPN:　そうですか？　……ああ、そう言えばもう一つ聞きたいことがあったんですよ。
@ENG:

@IDX:57915
@OFF:0xafc9
@SPK:［鏑木］
@JPN:　なんだ？
@ENG:

@IDX:57918
@OFF:0xb009
@SPK:[\protag]
@JPN:　今日みたいに傷のない死体なら、だいぶモノとして認識できるようになったんですけど、鏑木さんもそんな感じですか？
@ENG:

@IDX:57920
@OFF:0xb134
@SPK:［鏑木］
@JPN:　モノ？　ああ、まあそんな感じだな……だが忘れるな。あれは善意の提供者の死体だ。感謝の気持ちは忘れちゃいかん。
@ENG:

@IDX:57923
@OFF:0xb1d8
@SPK:[\protag]
@JPN:　それは分かってます。
@ENG:

@IDX:57925
@OFF:0xb231
@SPK:［鏑木］
@JPN:　それならいい。
@ENG:

@IDX:57928
@OFF:0xb277
@SPK:[\protag]
@JPN:　じゃあ、僕はそろそろ……。
@ENG:

@IDX:57930
@OFF:0xb2d6
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ああ、そうだな。お疲れさん。
@ENG:

@IDX:57933
@OFF:0xb32a
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい、お疲れ様でした。
@ENG:

@IDX:57934
@OFF:0xb42d
@SPK:
@JPN:　夜の仕事が終わった。
@ENG:

@IDX:57935
@OFF:0xb451
@SPK:
@JPN:　ミーティングに現れた真魚は、淡々と作業を進めて　いる感じだった。
@ENG:

@IDX:57936
@OFF:0xb4a1
@SPK:
@JPN:　いつもの明るい真魚ではない。
@ENG:

@IDX:57937
@OFF:0xb4cd
@SPK:
@JPN:　御堂さんの退職に対する心の整理が、まだつかない　のだろう。
@ENG:

@IDX:57938
@OFF:0xb529
@SPK:
@JPN:　早く元通りの真魚に戻ってもらいたい。
@ENG:

@IDX:57939
@OFF:0xb55d
@SPK:
@JPN:　あの天衣無縫な笑顔が、僕の心にどれだけの明るさ　をもたらしていたか、いまさらながらに痛感した。　
@ENG:

@IDX:57940
@OFF:0xb69b
@SPK:
@JPN:　軽くシャワーを浴びたあと、まっすぐ部屋に戻って　きた。
@ENG:

@IDX:57941
@OFF:0xb6e1
@SPK:
@JPN:　ズボンとシャツを脱ぎ捨て、布団の上に横になる。　
@ENG:

@IDX:57942
@OFF:0xb731
@SPK:
@JPN:　ボーッと天井を眺めていると、昼間の出来事が思い　出された。
@ENG:

@IDX:57943
@OFF:0xb77b
@SPK:
@JPN:　熱中症で倒れた僕を介抱してくれた真田さん。
@ENG:

@IDX:57944
@OFF:0xb7b5
@SPK:
@JPN:　思考の迷宮から僕を解放してくれた真田さん。
@ENG:

@IDX:57945
@OFF:0xb7ef
@SPK:
@JPN:　あんなにたくさん話したのは久しぶりな気がする。　
@ENG:

@IDX:57946
@OFF:0xb841
@SPK:
@JPN:　明日もまた仕事がある。
@ENG:

@IDX:57947
@OFF:0xb867
@SPK:
@JPN:　でも憂鬱な気分にはあまりならない。
@ENG:

@IDX:57948
@OFF:0xb899
@SPK:
@JPN:　真田さんに元気をもらったからかもしれない。
@ENG:

@IDX:57949
@OFF:0xb8e3
@SPK:
@JPN:　真田さん……。
@ENG:

@IDX:57950
@OFF:0xb901
@SPK:
@JPN:　今までは頼れるお姉さんってイメージだった。
@ENG:

@IDX:57951
@OFF:0xb93b
@SPK:
@JPN:　でも今はそれだけじゃない。
@ENG:

@IDX:57952
@OFF:0xb965
@SPK:
@JPN:　なんだかすごく身近に感じられる。
@ENG:

@IDX:57953
@OFF:0xb995
@SPK:
@JPN:　どうして急にそう思うようになったのだろう？
@ENG:

@IDX:57954
@OFF:0xb9df
@SPK:
@JPN:　そんな疑問をこねくり回していると、だんだん瞼が　重くなってきた。
@ENG:

@IDX:57955
@OFF:0xba2f
@SPK:
@JPN:　どんな時でも睡魔は平等に訪れる。
@ENG:

@IDX:57956
@OFF:0xba5f
@SPK:
@JPN:　なぜだか、今日はよく眠れそうな気がする。
@ENG:

@IDX:57957
@OFF:0xbaa9
@SPK:
@JPN:　ゆっくりと塞がりゆく瞼の裏に、真田さんの笑顔が　浮かんできた。
@ENG:

@IDX:57959
@OFF:0xbb23
@SPK:　そうだ
@JPN:…
@ENG:

@IDX:57960
@OFF:0xbb31
@SPK:
@JPN:…
@ENG:

@IDX:57962
@OFF:0xbb6d
@SPK:今度真田さんに会ったら
@JPN:…
@ENG:

@IDX:57963
@OFF:0xbb7b
@SPK:
@JPN:…
@ENG:

@IDX:57965
@OFF:0xbba7
@SPK:お礼を
@JPN:…
@ENG:

@IDX:57966
@OFF:0xbbb5
@SPK:
@JPN:…
@ENG:

@IDX:57968
@OFF:0xbbe1
@SPK:　言わ
@JPN:…
@ENG:

@IDX:57969
@OFF:0xbbef
@SPK:
@JPN:…
@ENG:

@IDX:57971
@OFF:0xbc19
@SPK:なく
@JPN:…
@ENG:

@IDX:57972
@OFF:0xbc27
@SPK:
@JPN:…
@ENG:

@IDX:57974
@OFF:0xbc51
@SPK:ちゃ
@JPN:…
@ENG:

@IDX:57975
@OFF:0xbc5f
@SPK:
@JPN:…
@ENG:

@IDX:57976
@OFF:0xbc6d
@SPK:
@JPN:。
@ENG:

